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千代田区の飲食店の皆さまへ
2020年度に東京都受動喫煙防止条例が始まります。
飲食店の禁煙化、一緒に考えてみませんか?

受動喫煙の防止はなぜ必要?

1.受動喫煙とは?

自分自身は喫煙をしなくても、周囲の人が吸ったたばこの煙を無意識に吸い込んでしまうことです。たばこから出る煙のことを「副流煙」、たばこを吸った人が吐き出す煙を「呼出煙」といいます。


2.たばこの煙、副流煙はなぜ危険?

たばこの煙には、重金属・放射性物質・70種類以上の発がん性物質など約4000種類もの化学物質が含まれています(1)。これらの有害物質は、喫煙者本人が吸う煙(主流煙)より、副流煙に何倍も多く含まれています(2)。


3.たばこの煙は健康にどのような影響をもたらすの?

受動喫煙をした人としていない人を比較すると、脳卒中・肺がん・虚血性心疾患を発症するリスクが高まると言われています。更に、受動喫煙が原因の脳卒中・肺がん・虚血性心疾患で年間1万5千人もの人が亡くなっているのです(3,4)

受動喫煙によって、かかりやすくなる疾患

※ クリックで拡大

厚生労働科学研究費補助金「たばこ対策の健康影響及び経済影響の包括的評価に関する研究」平成27年度報告書(厚生労働省)
「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」



受動喫煙 こんなこと、ご存知ですか?

Q1 1年間に受動喫煙で亡くなる人は、交通事故の●倍!?

A1 3倍以上

〇 解説
受動喫煙が原因の脳卒中・肺がん・虚血性心疾患・乳幼児突然死症候群で死亡した人は14,957人と報告されています。対して、交通事故が原因で死亡した人は3,904人であり、受動喫煙が原因の死亡者は交通事故が原因の死亡者の3倍以上もいることが分かります(3,4)。
日本では、受動喫煙の被害にあう場所として「飲食店」が41.4%、「職場」が30.9%となっています(5)。また、屋内での喫煙を法律により禁止することで、受動喫煙に関わる病気がどれだけ減ったかを調べた研究では、虚血性心疾患・脳血管疾患・呼吸器疾患が約2~4割減ることが分かっています(6)。受動喫煙の被害に最も合いやすい、飲食店の禁煙化を進めることは、お店で働く皆さまやお客様の健康を守ることにつながります。

非喫煙者が受動喫煙に遭遇した場所

平成29年国民健康・栄養調査

Q2 千代田民でたばこを吸う人の割合は、●人に1人!?

A2 7人に1人

〇解説
千代田民の喫煙率は全体で12.7%、男性で17.8%、女性で9.4%です。これは全国・東京都よりも低い値であり、千代田民7人に1人が喫煙者という結果になります。


平成28年 地域別・男女別喫煙率(%)

出典:全国・東京の喫煙率:国民生活基礎調査(平成28年)
千代田区の喫煙率:健康千代田21(健康増進計画)改定のための「健康づくり区民アンケート調査」(平成28年)


また全国・東京都における、平成13~28年の喫煙率の推移を見ると、年々喫煙者の数は減少しています。
千代田民の喫煙率は低く、また年々喫煙者は減る傾向にあることから、飲食店を禁煙化にしたとしても、お客様が一気に離れてしまう可能性は低いでしょう。


平成13~28年の喫煙率の推移(%)

厚生労働省「国民生活基礎調査」

Q3 完全禁煙にしたら売り上げは落ちる?

A3 海外や日本で行われた調査で売り上げへの影響はほとんどないという報告があります

〇解説
世界保健機関(WHO)によると、受動喫煙防止法がレストランやバーなどの飲食店の経営に与えた影響を検討した49の調査のうち、47の調査で売り上げは減っていませんでした(7)。
日本でも、愛知県が行った調査では、全面禁煙にした飲食店のほとんどが、売り上げは減らなかったと回答しています(8)。さらに、禁煙にしたファミリーレストランで、売り上げが4%増加したという調査もあります(9)。最近実施された飲食店を対象とした調査では、喫煙可能から禁煙に変更して、売り上げに変化がなかったと回答したお店は60%であり、12%は売り上げが増えたと回答しています (10) 。
禁煙化で客層が変わり、たばこを敬遠していた人々の利用が増えたこと、喫煙者に比べて非喫煙者の客単価が高かったことが、理由として考えられます。
実際に、喫煙店から禁煙店に変えた店主に話を聞くと、「家族連れ・女性客が増加し、飲み物だけでなく、食べ物の注文が増えた。客単価が以前より増えた。」という声があります。

Q4 新型たばこ(加熱式たばこ・電子たばこ)は安全じゃないの?

A4 有害物質は新型たばこにも多く含まれており、安全とは言えません。

〇解説
【加熱式たばこ】たばこ葉を加熱して、その蒸気を吸います。たばこ葉に含まれる有害物質は加熱式たばこも紙巻きたばこも同じなので、紙巻きたばこと同様の害がある可能性があります。また加熱式たばこには紙巻きたばことも異なる有害物質が含まれているため、人の健康にどんな害をもたらすのか、何十年も先にならないとわかりません。
【電子たばこ】液体を加熱して、その蒸気を吸います。日本では、薬事法でニコチンを含んだ液体の使用は禁止されています。しかし、個人で海外から輸入した電子たばこには、ニコチンが含まれている可能性があるため、注意が必要です。ニコチンなどが含まれていないものでも、健康を害する可能性のある物質を使用しています。ケムランでは電子たばこもNGとしています。その理由は加熱式たばこと電子たばこの見分けがつかないため、お店の方にとってそれを区別することが難しく、手間を増やすことになるからです。日本で発売されている電子たばこはニコチンが含まれないものの、強いフレーバーをつけていますので、飲食店には不向きともいえます。

Q5 分煙にすれば問題ない??

A5 分煙は、受動喫煙の防止策にはなりえません。

〇解説
理由1:完全に煙を遮断できる部屋を作ることは技術的に困難かつ高価な設置費用がかかる
 ・たばこの煙が漏れ出るのは防げないという報告があります(11)
 ・専用喫煙室の設置には数百万円の費用がかかります。いくつかの自治体で設置の補助を出しているところもありますが、将来的にはこの喫煙専用室の設置が禁止になる可能性もあり、その際にはさらに撤去の費用がかかります。ケムランではお店の座席数を減らさないためにも、喫煙専用室を設置しないことをオススメします。

理由2:ドアの開閉、喫煙者が移動することでの受動喫煙が発生
 ・喫煙室のドアの開閉をしたら、煙は店内に流れ出てしまいます(12)。
 ・喫煙室から退出する人といっしょに、煙が店内に持ち出されます
 ・喫煙した人の肺からたばこの煙が店内で吐き出されることで、分煙をしていても、店内で受動喫煙が発生します(13)。

理由3:空気清浄機は有害物質を吸い取れない
 ・空気清浄機で有害物質を吸い取ろうとすると、強風が吹き荒れるような強さが必要です。そのような環境下で飲食はできません。空気清浄機でできるのは、たばこの煙による刺激症状を軽減する程度であり、有害物質はほとんど吸い取られていません。
 ・性能の高い空気清浄機の設置にはコストがかかります。メンテナンス費用も莫大です。しかしこのメンテナンスを怠ると、有害物質を吸い取ることは更に困難となってしまいます(11)。

理由4:従業員の健康が守れない
 ・分煙をしていても、接客のたびに、従業員はたばこの煙を吸うことになります。また、喫煙室の掃除を行う従業員は必然的に受動喫煙の被害にさらされます。

まとめ

  • 受動喫煙が原因で、年間1万5千人が死亡=受動喫煙は他者の健康を損なう。
  • 受動喫煙の被害に最も合いやすい場所が飲食店。
  • 分煙・加熱式たばこも健康被害を防ぐことは困難。
  • 禁煙にしても売り上げはほぼ落ちないと言われている+千代田区は喫煙率が全国的に少ない。一気に売り上げが落ちる可能性は少ないため、どうか一度、禁煙化を検討してみてほしい。


参考文献

(1) IARC monographs on the evaluation of carcinogenic risks to humans, vol.83: Tabacco smoke and involuntary smoking. pp.81-83, 2004
(2) Rodgman A, Perfetti TA. Alphabetical Component Index. In: The Chemical Components of Tobacco and Tobacco Smoke Second Edition. Rodgman A, Perfetti TA, editors. Boca Raton, FL: CRC Press, 2013; xxix–xciii.
(3) 厚生労働省検討会報告書 喫煙の健康影響に関する検討会編:喫煙と健康, 2016. (たばこ白書)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135586.html
(4) 厚生労働科学研究費補助金「たばこ対策の健康影響及び経済影響の包括的評価に関する研究」平成27年度報告書(厚生労働省)
(5) 平成29年国民健康・栄養調査
(6) Tan C.E. et al; Association between smoke-free legislation and hospitalizations for cardiac, cerebrovascular, and respiratory diseases: a meta-analysis. Circulation 126: 2177-2183, 2012
(7) IARC Handbooks of Cancer Prevention volume13. Evaluating Effectiveness of Smoke-free Policies. 2009
(8) 愛知県 健康福祉部 健康担当局 健康対策課. 健康長寿あいち推進グループ. 飲食店における訪問調査受動喫煙防止対策実施状況調査(平成22年5月25 日)
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kenkotaisaku/0000032084.html
(9) 大和 浩,他. 某ファミリーレストラングループにおける客席禁煙化前後の営業収入の相対変化 未改装店,分煙店の相対変化との比. 日本公衆衛生学会誌.2014.61(3):130-135
(10) クックビズ総研. 「飲食店の禁煙化に関する意識調査」(インターネット調査. 2019年1月24日)
https://cookbiz.jp/soken/news/inshokuten_nonsmoking/
(11) PROTECTION FROM EXPOSURE TO SECOND-HAND TOBACCO SMOKE Policy recommendations World Health Organization 2007
(12) 大和 浩,他. 飲食店における受動喫煙対策の実態及び課題に関する研究.厚労科研費平成23年度「飲食店等多数の者が利用する施設における受動喫煙対策の実施及び課題に関する研究」報告書
(13) 大和 浩. 受動喫煙防止対策と禁煙支援. 公衆衛生情報 2013; 42; 21-26